初めて“ひとりディズニー”してみた日
私は毎年、誕生日付近に一人旅行をすることにしている。
去年の誕生月、旅先に選んだのはディズニーリゾートだった。
私は関東住みのため、旅といえるかは分からないが、このご時世のため、遠出ができなかったのだ。
今まで、ディズニーリゾートは家族と行く事がほとんどだったが、その時に一人でディズニーを楽しむ人の姿は多く見受けられた。今の時代、ひとりディズニーなど当たり前、自分も優雅にディズニーを満喫しようと考えたのだ。
とはいえ、当時再開したばかりのディズニーリゾートは、
かなり盛り上がっている最中であり、チケット戦争と呼ばれるほど、チケットを取ることは容易ではないらしい。
もともとどこかで一泊する予定だったので、チケット付きのパートナーホテルのプランを申し込んで、戦争から逃れることに成功した。
まず言っておきたい。
私は特にグッズを集めるほど好きなキャラクターはいないし、パークに行ってもグリーティングやパレードは連れが見たがったら見るタイプの人間である。
そんな人間がひとりディズニーをする事自体が少しずれているのだが、何も言わないでほしい。もう来てしまったのだから。
ひとりディズニー当日、朝、後悔。
早すぎる後悔に襲われていた。
周りの人の足取りが軽くなる中、私の足取りは月曜日の出勤時ぐらい重いものだった。
一人だと話し相手がいないので、いつもより周りを見渡してしまい、孤独感を強く感じていた。私が今まで目を背けてきた20うん年分の「寂しい」という気持ちが襲ってきた。
そんな孤独ディズニーの幕開けである。
入園後最初に向かったのはレストラン。
とりあえず緊張をほぐすためにアルコールを取り入れたかったのだ。
（言い忘れてましたが、ディズニーシーに行きました）
レストランでチキンとビールを買うと、アナウンスが流れた。
「あと15分でミッキーと仲間たちによる水上ショーが始まります――――」
まずはミッキー達にご挨拶、大人として当然の礼儀である。
幸いにも5000人ほどの集客しかなかった今日は、15分前にも関わらず、最前列を陣取れるほど空いていたので、ビールを飲みながら待った。
しばらくして壮大な音楽と共に現れたミッキーと仲間たちは、今まで見た中で一番輝いて見えた。
一人でいるからなのかは分からないが、迷子の中、偶然出会えた知り合いが神様のように輝いて見える感覚に似ていた。
ミッキー達に手を振り、その時に今まであった恥じらいが少し消えた。
ミッキー達に手を振ることで、“私はとてもディズニーが好きで、ミッキーに会うために一人で何回も来ていますので、今日もいつも通りですご心配なく感”を出せた気がしたのだ。
私は世界で唯一ミッキーを利用した女かもしれない。
ご挨拶の後、ファインティングニモのアトラクションである「シーライダー」に向かった。
私はディズニー作品の中で、ファインティングニモが一番好きなのだ。
このアトラクションを初めて乗った時、涙を流してしまい、家族に精神状態を心配されたことはよく覚えている。もちろん正常な状態ではない。
ちなみに私がファインティングニモが好きな理由は、悪い奴が出てこないからだ。
そしてまた水上ショーを見た。
ディズニー好きの方は気づいたかもしれないが、パレードは3時間ほどの間隔で、1日に3回行われる。
その間、シーライダーしか乗っていないじゃないかと思われたかもしれないが、安心してほしい。その通りなのだ。
私はシーライダーに乗った後、マーメイドラグーンのトイレ個室でアニメを見ていた。
トイレに引き籠るなど何事だと怒る人がいるだろうが、死ぬほど個室の多いトイレなので、怒りを20%ほど静めてほしい。
私はディズニーに来てまでニンテンドースウィッチを持ってくる子供に懸念を抱いていたにも関わらず、自分は弱虫ペダル第二期インターハイ一日目を見ていたのである。
やる事が無かったわけではないが、やりたい事が思いつかなかったのだ。
来る前は色々食べたいものをチェックしていたが、なんだかどれも気分ではなくなってしまった。ちなみにこの症状は一人だからではなく、私にとっては日常茶飯事なのだ。
唯一意欲があったのは20時から行われる花火。
これだけは絶対見ようと決めていたが、まだまだ時間は先である。
二度目の水上ショーを見た後、もともと予約していたレストランでコース料理を食べた。
聞いたことない銘柄の白ワインを頼み、記念にその際のグラスを買った。
もちろんグラス等のスーベニアはいつもなら絶対買わないが、食べたいと思っていた食べ物をパスしたため、予算が余り、そんな使い方しか思い浮かばなかったのだ。
そしてそのあと、ディズニーシーの最新アトラクション、ソアリンに乗った。
ソアリンに乗って驚いたことがある。涙が出たのだ。
とはいえソアリンに乗るのは4度目で、感動するアトラクションである事は間違いないが、泣いたことなどなかった。
ソアリンの説明を一応しておくと、乗り物に乗って空から世界の絶景を見ることが出来るアトラクションである。
そこで私は世界を眺めながら「あーー小せえ。自分の人生があまりにも小せえ。」と涙が出たのだ。感動ではなく、シンプルに悲しくて涙が出たのだ。
ディズニーリゾートは夢が叶う場所。と言われているが、
私には「叶わなかった夢を思い出させてくれる場所」になってしまったのだ。
進路を決める際に諦めた夢や、努力したけど叶わなかった夢。
このまま後悔を抱えながら死んでいく事も承知で、すべて受け入れて諦めた夢たち。
今更改めて追いかける元気もないが、それらを思い出して泣けてしまったのだ。
そして涙を誰にも見られないようにしながら、ソアリンを出た。
外に出ると、何故か空気が白く霞んでいた。
そしてこの匂い、煙たい匂いが私を包んだ。
時刻は20：09。新たな後悔が刻まれた瞬間である。
私は、夏の匂いに包まれながら、ホテルへ向かった。
次の日、帰りの電車で画像フォルダを見た。
二日間で撮った写真は、パレード待ちの時のビールと山のツーショットのみだった。
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ひとりディズニー、私は向いていなかったようです。
しかしその後、連れありでディズニーリゾートには何回か行きましたが、
ひとりディズニーをしている人を見るとやっぱりまた一人で行きたくなってしまいます。
また挑戦することがあったら、Wi-Fiは家に置いていこうと思います。
婚活パーティーに行ってみた日の事
私の婚活デビューは22歳。
婚活をするには早いような気がするが、20代前半にしてすでに恋愛から遠ざかっていた私は多少の焦りがあった。
せっかく恋愛をするなら、結婚につながる出会いが欲しい、そんな思いから色々すっとんで婚活パーティーに行く決意をした。
今この文を書いていて思った。
（この頃の私の意欲、戻って来いよ！！）
とはいえ、私一人では絶対に行く勇気はなかったと思う。
その頃働いていた職場の先輩が結婚することになり、
その人が書いていた『独身のうちにしたいことリスト』にあったのが婚活パーティーで、
その同行者に選ばれたのが私だったわけである。
当時アパレルで働いていた私たちは私服がかなり派手で、
会場のあるオフィス街では間違いなく浮いてしまうため、
私はかなり大人しめなワンピースを着ていった。
そして私は驚愕した。
待ち合わせ場所には、普段以上に派手な服を着て、
真っピンクなチークで頬を染め上げた先輩が立っていたからである。
この人は婚活パーティーの“パーティー”という部分に引っ張られすぎてないか？
と思ったが、とりあえず着替えてもらう時間はないので会場へ向かった。
（職場の人に、自分の勝負服を見られるのは少し恥ずかしかった）
会場に入ると若い女の人が受付をしていた。
とことん不純な私は、こういう職業はナンパされやすいのではないか・・・と思った。
（帰り道、ちょっと求人サイトを見てしまった）
私たちは二人組で行ったわけだが、席は離される。
というか中学の席のように、一人ひとり離れ小島になっていた。
（小学生のときはふたつ机をくっつけていたのに、中学に入ると机が離されているのを見て、大人になったなと感じたのは私だけだろうか。）
席にはすでにプロフィールカードが置かれていて、名前から職業、趣味、好きなタイプなど結構細かく自分の事を書かなくてはいけないようだった。
このカードには意外と悩まされた。
プロフィール帳ド世代の私にとっては、たやすい事だと思ったが、
この年になって自分のプロフィールを書くというのはなかなか頭を使う。
（この書き方だと少し嫌味だろうか・・）（これだと話が膨らまないか・・）など
余計な考えが頭をよぎり、なかなかペンが進まないのである。
バカみたいに〈まわりからは《てんねん》って思われてるよ！〉と書いていた頃の自分に戻りたくなりつつ、自分史上最も『ちょうどいいプロフィール』を書き上げた。
もちろんすでに疲れている。
ちらりと先輩を見たが、やはりすでに疲れているようだった。
この時さらっと周りの参加者を見てみる。
あわせて１０人～１２人ほどいて、意外と集まっていた事に気づいた。
年齢は自分が最年少だった気がする。
こういう時、男性よりも女性陣の顔を見てしまうのは、私のいやな部分だろう。
意外だったのはみんな美人だったことだ。
結婚に急いでいる感じはしなかったし、普通に生きていれば恋愛に不自由しなさそうな印象だった。今となっては、【外見が良いのになぜか結婚できない女たち】の存在は十分承知しているが、当時婚活初心者の私は結構驚いた。
この話はまた今度として、すでに疲れている私は、
「この世界には私たちしかいない、この中から結婚相手を探さねば遺伝子が生まれない・・・！」という幻想を抱いていた。（きっと目はキマってた）
そんな恐ろしい幻想のなか、いよいよ婚活スタートである。
離れ小島に居座っていると、目の前に男性が来て、５分ほど話をして、また別の男性が来て、という男性側がぐるぐる回ってくれるシステムだった。
そういえば「ナイナイのお見合い大作戦！」でお馴染みの「お見合い回転寿司」では女性が回っていた気がする。つまり私は自衛官サイドを味わえたわけだ。
「お見合い回転寿司」の感想。とにかく５分が長かった。就業前の５分間より長く感じた。
まず、初対面の人に「顔がタイプ、タイプじゃない」以外の感情が生まれない。
プロフィールを読んでも、「字がきれい、汚ねぇ」以外の感想が出てこない。
私は当時社会人２年目の若造なので、職業を言われてもピンとこないし（今でもＳＡは実際何をしているのか分かってない）、初対面の人の好きなタイプも全く興味がなかったのだ。
そして顔がタイプだったとしても話が全く盛り上がらない。
私たちが書かされたプロフィールの内容は、結局は好きであれば許容されるものだし、恋愛にはなんの障害もないものばかりだったのだ。
そこで少し考えたのだが、プロフィールには声に出して聞きにくい事を書いて、職業などは５分間の間で直接聞けば、なんとか時間が持った気がする。
《（理想の）プロフィールカード》
下記を全部埋めてください。
なるべく細かく書くと、カップル成立率がＵＰ！
・性癖（一番にこれが出てくる私も私だな）
・付き合ったらどれくらいで結婚したい？
・地元の友達は異性が多い？
・浮気はどこから？
・将来的に親と住みたい希望はある？
・追いかけている夢はある？
・いびきがうるさいと言われたことがある？
（他に良い質問あれば募集します）
プロフィールカードには良い事もあるが、読んでしまえば終わりのため、
共通の趣味や興味深い事案がなければ話が膨らまないのだ。（もちろん膨らませ上手な人はいると思う）
これには私の『ちょうどいいプロフィール』もお手上げ状態である。
なんとか当たり障りのない会話をして、一周した頃にはすでに帰りに何を食べるかを考えていた。書いていると本当に自分がクズで泣けてくる。
そしてそのあと、フリータイムが設けられていた。
気になった相手のところにもう一度行けるというわけだ。
私はとりあえず先輩のところに行こうと思ったが、そこで衝撃な現場を目にした。
先輩の周りに男性が３人いたのである。
これはナイナイのお見合い大作戦でいう『一番人気女性』というやつである。
正直、私は先輩と待ち合わせ場所で合流した時点で、この人はモテないだろうな、、と思っていた。（ファッションが派手すぎるため）
ところが私の予想は全く外れ、会場には先輩のゲラゲラ楽しそうな声が響いていた。
ここで少し先輩の事を書くと、先輩は誰に対しても分け隔てなく接することができるタイプで、１話すと１０質問をしてくれて、とにかく興味をもってくれるため、先輩と話すのはとても楽しかった。私もたまに先輩ということを忘れ、ため口になってしまうぐらいフレンドリーな人だった。
婚活パーティーという限られた人数・限られた時間で相手を探すというのは、
顔がタイプの人に狙いを定めて、そのあとゆっくり食事でもしながらどんな人か探っていく『とりあえずの出会いの場』かと思っていたが、少なくとも私が参加したその会で勝利したのは、周りに合わせることなく自分のスタイルを貫き、自然体の自分で勝負した先輩だった。外見では浮いているのに、その場にいて全く不愉快ではない、むしろ心地いいそんな人なのだ。
もちろん私は完敗である。
『ちょうどいいプロフィール』を書き上げた時から私の試合結果は出ていたわけだ。
偽った自分を好きになってもらおうなんて、相手を馬鹿にしているし、
ありのままの自分に自信がない証拠だった。
そして、私は告白シートを白紙で出した。
告白なんかしている場合か。
一刻も早く自分を磨いて出直すぞ！という気持ちだった。
まずは自分が自分を好きになれるように。
そんな初めての婚活パーティーが終わり、先輩と牛タンを食べて帰った。
先輩はとても楽しかったと言っていた。そりゃそうだ。
先輩の人柄の圧勝だったわけだから。
そのチークはどうかと思うけど、間違いなく素敵な人だ。
しかし皆さんに思い出してほしいのは、この『一番人気女性』はすでに結婚が決まっているのである。
もう絶対婚活パーティー行くなよ！
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ここまで読んでくださった方、ありがとうございました。
私は小説の読みすぎで、語尾が常体になってしまいます。
少し威圧的に感じた方、すみません。
またお付き合いいただけると嬉しいです。
